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コレステロールの薬が緑内障を予防する?

皆様こんにちは!

実は私、今年中性脂肪が上がっていて急いで食生活など気をつけて出したのですが、お年をとってくると気を遣っててもコレステロールなどが高いと言われたりしますよね。健康診断でコレステロールが高いと言われ、薬を飲んでいる方も多いのではないでしょうか。

脂質異常症の治療に広く使用されている「スタチン」という薬について、眼科領域で非常に興味深い研究結果が発表されました。

2026年10月6日、医学雑誌 British Journal of Ophthalmology に発表された研究によると、スタチンを内服している人は、内服していない人に比べて、開放隅角緑内障を発症するリスクが約15%低かったことが報告されました。

さらに、すでに緑内障を発症している患者さんについても、緑内障手術やレーザー治療などの追加治療を受ける割合が低いことが明らかになりました。

今回は、この研究結果を詳しく紹介するとともに、なぜコレステロールを下げる薬が緑内障に関係する可能性があるのかを解説します。

緑内障は、目から脳へ視覚情報を伝える「視神経」が障害され、徐々に視野が欠けていく病気です。日本では失明原因の上位を占める重要な眼疾患であり、40歳以上の約20人に1人が緑内障を有すると報告されています。緑内障の大きな特徴は、一度失われた視神経の機能を回復させることが非常に難しいという点です。そのため、できるだけ早く発見し、進行を抑えることが重要になります。現在、緑内障の進行を抑えるために効果が確立されている治療は、眼圧を下げることです。点眼薬、SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)、緑内障手術などによって眼圧を下げ、視神経への負担を軽減します。しかし、日本人に多い正常眼圧緑内障のように、眼圧が正常範囲内でも視神経の障害が進行する場合があります。そこで近年、眼圧以外の要因、特に血流障害、炎症、酸化ストレス、神経細胞の保護などが注目されています。

スタチンは高脂血症治療薬の一つで、肝臓でコレステロールが作られるのを抑える薬です。LDLコレステロール、いわゆる「悪玉コレステロール」を低下させ、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクを減らす目的で使用されています。

日本で使用されている代表的な薬には、次のようなものがあります。

  • ロスバスタチン(クレストール)

  • アトルバスタチン(リピトール)

  • ピタバスタチン(リバロ)

  • プラバスタチン(メバロチン)

  • シンバスタチン(リポバス)

スタチンはコレステロールを下げるだけでなく、血管の内皮機能を改善したり、炎症を抑えたりする作用も持つと考えられています。これらは多面的作用(pleiotropic effects)と呼ばれています。そして、この多面的作用が視神経の保護にも関係するのではないかと研究されてきました。

今回の研究は、アメリカの研究者らが世界的な医療データベース「TriNetX」を使用して行った、大規模な後ろ向きコホート研究です。40歳を超える患者さんについて、スタチンを内服している人と内服していない人を比較し、その後の緑内障発症や治療状況を調べました。

緑内障の新規発症については、スタチン内服群と非内服群で、それぞれ約21万人の患者さんが比較されました。

5年間の追跡では、次の結果となりました。

  スタチン内服群 非内服群
緑内障の新規発症 2.3% 2.6%

統計解析では、スタチン内服者の緑内障発症ハザード比は0.85でした。

これは、スタチン内服者では非内服者と比較して、緑内障の発症が約15%低かったという意味です。

また、10年間の解析でもハザード比は0.90であり、緑内障発症リスクが10%低いという結果がわかりました。

今回の研究でさらに興味深いのは、すでに緑内障を発症している患者さんについても解析が行われたことです。

スタチン内服者では、緑内障に対する追加治療を受けるリスクが低いという結果が認められました。

5年間の解析結果は以下のとおりです。

治療内容 リスクの低下割合
緑内障の観血的手術 約36%低下
MIGS(低侵襲緑内障手術) 約55%低下
SLT(選択的レーザー治療) 約60%低下
緑内障点眼薬の処方 約11%低下

※ハザード比から計算した相対的な低下割合です。

特にSLTでは、ハザード比0.40という大きな差が認められました。また、10年間の解析でも、手術、MIGS、SLT、点眼薬の処方について、スタチン内服者で治療強化が少ないという関連が維持されていました。ただし、追加治療が少ないことが、そのまま視神経障害の進行が抑えられたことを意味するわけではありません。治療の選択には眼圧だけでなく、患者さんの希望、薬の副作用、通院状況、医療機関の治療方針など、さまざまな要因が関係します。そのため、今回の結果は非常に興味深いものですが、スタチンが緑内障の進行を直接抑制したと証明されたわけではありません。

スタチンと緑内障の関係については、いくつかの作用機序が考えられています。

① 視神経の血流改善

視神経が正常に働くためには、十分な血液や酸素の供給が必要です。緑内障では眼圧だけでなく、視神経周囲の血流や血管調節機能が関係している可能性があります。スタチンには血管内皮の機能を改善する作用があり、血管拡張に関係する一酸化窒素(NO)の働きにも影響します。このような作用が、視神経への血液供給に良い影響を与える可能性が考えられています。ただし、スタチンによって実際に視神経血流が改善し、緑内障を予防できると確認されたわけではありません。

② 抗炎症作用

慢性的な炎症は、神経細胞の障害に関係する可能性があります。スタチンには炎症に関わるさまざまな反応を調節する作用が報告されています。緑内障でも、視神経や網膜神経節細胞の周囲で起こる炎症反応が、神経障害に関係している可能性が研究されています。スタチンの抗炎症作用が、このような神経障害を軽減する可能性があります。

③ 神経保護作用

緑内障で障害されるのは、網膜に存在する神経節細胞と、その軸索である視神経です。スタチンには、神経細胞の生存や細胞内のシグナル伝達に影響する作用があることが基礎研究で示されています。例えば、酸化ストレスや炎症反応の抑制などを通じて、神経細胞の障害を軽減する可能性があります。このような作用が、緑内障における神経保護につながるのではないかと期待されています。

④ 眼圧への影響

一部の基礎研究では、スタチンが線維柱帯の細胞や房水の流出機能に影響する可能性も示唆されています。線維柱帯は、目の中の水分である房水を排出する重要な組織です。房水の流出が改善すれば、眼圧が下がる可能性があります。ただし、スタチンの内服によって臨床的に有意な眼圧下降が生じるかどうかについては、まだ十分な証拠がありません。

 

実は、スタチンと緑内障の関係は今回初めて報告されたものではありません。

2022年に医学雑誌 eClinicalMedicine に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、約51万人を対象とした研究を統合した結果、スタチン内服者では開放隅角緑内障の発症リスクが約5%低いという関連が報告されています。ただし、過去の研究では結果が一致しておらず、緑内障の進行を抑えるかどうかについては明確な結論が得られていませんでした。今回の2026年の研究は、さらに大規模な医療データを用いて、緑内障の新規発症だけでなく、治療の追加という観点からもスタチンとの関連を検討した点に特徴があります。つまり、これまで示唆されてきたスタチンの緑内障に対する保護作用について、新しいデータが加わったことになります。

ここが最も重要なポイントです。

現時点では、緑内障の予防や治療を目的としてスタチンを新たに内服することは推奨されていません。今回の研究は、過去の診療データを解析した観察研究です。そのため、スタチンを内服したことが直接緑内障の発症リスクを低下させたのか、それとも内服者と非内服者の間に存在するほかの違いが影響したのか、完全には区別できません。また、研究データには眼圧、視野検査、OCTなどの詳しい情報が十分に含まれていませんでした。したがって、スタチンによって眼圧が下がったのか、視神経が保護されたのか、視野障害の進行が抑制されたのかについては明らかになっていません。さらにスタチンにも、筋肉症状や肝機能異常などの副作用が生じる可能性があります。緑内障を予防するためだけに、自己判断で内服を開始するべきではありません。

Q1.コレステロールの薬を飲んでいれば緑内障にならないのですか?

いいえ。今回の研究ではスタチン内服者で緑内障の発症リスクが低いという関連が認められましたが、緑内障を完全に予防できるという意味ではありません。

スタチン内服中でも緑内障を発症することはあります。

Q2.スタチンを飲んでいるので、緑内障の目薬をやめてもよいですか?

いいえ。現在、緑内障の進行抑制効果が確立されているのは眼圧を下げる治療です。

スタチンは緑内障治療薬の代わりにはなりません。医師の指示なく点眼を中止しないでください。

Q3.どのスタチンが最も緑内障に良いのですか?

現時点では、特定のスタチンが緑内障の予防や進行抑制に最も効果的であると断定することはできません。

薬の種類、内服量、内服期間による違いについては、今後の研究が必要です。

Q4.正常眼圧緑内障にも効果が期待できますか?

スタチンの神経保護作用が本当に存在するのであれば、正常眼圧緑内障にも関係する可能性はあります。

しかし今回の研究から、正常眼圧緑内障に対する明確な予防・治療効果を結論づけることはできません。

Q5.緑内障を予防するために、今できることは何ですか?

最も重要なのは、緑内障を早期に発見することです。

緑内障は初期には自覚症状がほとんどないことが多く、気づかないうちに視野障害が進行している場合があります。

40歳を過ぎた方や、家族に緑内障の方がいる場合には、眼科で眼圧検査や眼底検査、必要に応じてOCTなどを受けることをおすすめします。

 

今回の研究では、スタチン内服者において、開放隅角緑内障の発症リスクが低く、さらに緑内障に対する追加治療も少ないという結果が報告されました。特に興味深いのは、コレステロールを下げる薬が、血流改善や抗炎症作用、神経保護作用を通じて視神経にも影響する可能性があるという点です。現在の緑内障治療では眼圧下降が基本ですが、将来的には眼圧以外の経路から視神経を保護する治療が加わる可能性もあります。ただし、今回の研究はスタチンによる緑内障予防効果や進行抑制効果を証明したものではありません。今後、無作為化比較試験などによって、本当に緑内障に対する保護効果があるのかを明らかにする必要があります。緑内障の発症や進行を防ぐために、今できる最も確実なことは、適切な眼科検査と、必要に応じた眼圧下降治療です。緑内障は早期発見・早期治療が大切です

緑内障は、一度障害された視神経の機能を元に戻すことが難しい病気です。

また、眼圧が正常範囲でも緑内障を発症することがあります。

かしま眼科では、眼圧検査、眼底検査、OCTによる視神経・網膜神経線維層の評価、視野検査などを組み合わせ、緑内障の早期発見と進行評価に取り組んでいます。

「最近、眼科の検査を受けていない」「家族に緑内障の人がいる」「健康診断で視神経乳頭の異常を指摘された」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

では今日の一枚です!
仲良くぐうたらする姉弟です!
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